この曲、書き上げた時は「やった!」と思いました。
長年曲を書いていますが、なかなかそう言う事は少ない物です。
デモテープの段階では少しソウルテイストが入った曲で、サビなどは軽くシャウトする様な、そんな感じの曲でした。
まぁ1985年ポールヤングによる大ヒット「Every time you go away」をイメージしていたんですね。歌はうまいし男っぽいし、「爽やか」とは違った面を模索していた僕には「こんな感じ、いいなぁ〜」と思っていました。
果たして送られて来た譜面には「熱さ」が抑えられ「クールさ」が前面に出されたアレンジが書かれていました。
「空間的」と言うか、「浮遊感」と言うか、とにかくそれまでに自分たちでは全く接した事のないサウンドでした。
まぁそれは僕等の演奏にも出ていたのでしょう、この曲だけはメンバーの演奏は入っていません。
鑑さんが別件でロンドンに行く事になっていたので、そこで諸々をレコーディングして来ると言う事になり、Bassジョンギブリン、Guitarアランマーフィーといったロンドンの名うてのミュージシャンによってダビングされました。
コーラスもイブさん(女性三人組で当時絶頂のスタジオコーラスミュージシャン)が歌っています。
歌詞は、当初「熱い」ラブソングにしようと思っていたのですが、アレンジを聞いた結果、「孤独感」をテーマにした物にしました。
当時大学生作家であった平中悠一さんの「シーズレイン」と言う小説がありまして(神戸を舞台にした青春小説で平中さんは17歳にして文藝賞を受賞されています)、僕も涙と鼻水を垂らして読んだのですが、その続編である「アーリーオータム」と言う作品が有りました。
これは「シーズレイン」の続編でありながら時系列的にはさかのぼった「シーズレイン以前」の話なのですが、これにまた僕もハマりまして(笑)。
その「アーリーオータム」の最後の一行が「フィルスペクターのような、街の響きに抱かれたままで…」という物でした。
「あぁ…ご免なさい、カッコ良過ぎです、しびれました…」と言う訳です。
後日(数年後だったかも知れません)どなたかが「あれは『アーリーオータム』からの引用なのかな…」と、何かに書かれていましたが、その時はお答えするすべが無かったのですが、ここでハッキリお答えします。
まさに、その通りです。
ただし、歌詞の内容は全く引用されておりませんので(念のため)笑。
ちなみに「シーズレイン」は1993年に映画化されましたが、残念ながら僕は観ていません。